今春、思いがけず設計事務所を創業、主宰することになった。
サラリーマンアーキテクトのまま、悠々自適の老後を夢見ていたというのに、これで有無を言わさずに「生涯現役の建築家!」。
人生は不可解、なかなか想い通りには展開してくれない。
今、創業期のドタバタで好きなゴルフにも身が入らず、唯一の癒しの時は、一杯の缶ビール片手に自宅ベランダで満天の星空を見上げながら至福の時を過ごすこと。
そういえば、家族の不評にもめげず、我家のリビングにはエアコンがない。
風通しのよい吹抜け天井と、昔ながらのヨシズと風鈴と打ち水で涼をとることを旨とする自宅設計者の心意気というべきか。それゆえ毎晩のごとく、夕涼みならぬ「深夜涼み」を洒落こむという次第なのです。
夜空を見上げていると、想いは自然に「宇宙空間」へと拡がっていく。
このかけがえのない地球、太陽系、銀河系そして全宇宙・・・・・。
「人はどこから来たのか、何者か、どこへいくのか。」
それにしても、最近の物理学と宇宙論の進歩はまことにめざましいものがある。
つい最近も「超対称性粒子」の発見かという、宇宙論マニアにとって垂涎もののニュースが全国紙に大きく報道された。宇宙創生の謎あるいは宇宙空間の最大の謎とされるダークマターやダークエネルギーの解明がまたれる。
最近得た知識だが、実は宇宙の「宇」は家屋の軒のこと、そして「宙」は家の棟木と梁のことをさすらしい。してみると建築の世界の住人が「宇宙」に想いをめぐらすことは、あながち的外れなことではないのかもしれない。それにしても、人類にとってこの広い宇宙で本当に「快適な空間」は、この太陽系のこの地球以外にないのだとつくづく思う。
新会社は「快適空間研究所」と命名した。
そして自戒の念をこめて、社訓を「悠々として急げ」とした。